成功事例
省エネ塾---省エネルギー雑誌より
省エネ塾
照明・換気・冷房に過剰適切な見直しで大きな効果。
真夏のピーク時の電力消費の約4割は、オフィスビルや商業施設、官公庁
などのいわゆる業務部門といわれています。
産業部門の工場が、操業日を変更しても、業務部門での電力消費のピ
ークカットが進まなければ、国を挙げての取り組みが意味のないものになり
かねません。
今夏の電力不足に対して、業務部門のピーク時の電力消費を減らすポイン
トはどこにあるのでしょうか。大きな意味を持つのが、オフィスや店舗にあ
るエネルギー消費の見直しです。
一般的に、日本のオフィスや店舗には、3つの過剰があるといわれていま
す。具体的には、照明が明るすぎる、換気しすぎる、冷房温度が低すぎる、
です。
心当たりはありませんが実は照明、室内の温度や鮮度に関する規制や基準
を必要以上に意識しすぎて、必死に対応しようとするあまり、知らず知らず
のうちに電力の過剰消費を促している現実があるのです。
規制や基準を正確に理解し、原点に戻って設備の設計や運用、習慣を見直
せば、電力消費を大きく削減できます。
以下に、規制と基準に関する見直しの
事例を示します。
①まず基準の見直しです。強制力はありませんが、日本のオフィスでのJIS
規格による明るさの基準は500-750ルクスです。日本の照明学会が約200
のオフィスで実測したところ、1000ルクスより明るい職場が全体の3割を超
えていたそうです。
ちなみに米国・カナダの基準は200~500ルクス、オーストラリアは何と
160ルクスです。同じ照明の明るさの基準でこれだけ違うのです。
日本の実態は米国・カナダの下限の5倍、オーストラリアの明るさの基準の
実に6倍以上になります。このことを知ったある大手信託銀行は今夏、オフ
ィス全体の照明の基準を600ルクスに改め、節電に取り組みました。
②次が規制の見直しです。
これには、「建築基準法における高層ビルの24時間常時換気」や「建築基準法/労働
安全衛生法におけるビルのCO2濃度1000PPM以下」などがあります。
都内のビルのCO2濃度を都が調べたところ、7割は750PPM以下だったそうです。
1000PPMを25%も下回る数字です。
大手を中心に一部企業でサマータイムが始まっています。人がいない深夜の
ビルの換気が、1年365日、本当に必要でしょうか。
③過剰な換気のために過剰な電気を使っています。
オフィスや店舗には照明、換気、冷房の3点で過剰。
750ルクス以上の照度や深夜の換気が本当に必要かっているとはいえないでしょうか。今
夏はさすがになくなったでしょうが、換気のために窓を開け放ったまま冷房
しているオフィスや、たばこの煙を逃がすために、冷房を最強にしながら換
気扇をフル回転させている遊技施設をいくつも見てきました。
照明の明るさをJIS規格の下限である500ルクスに合わせる、施設のCO2
濃度を1000PPMで維持するの2つを、日本中の企業の業務部門で実施すれば、
空調と照明を合わせて450万kW~470万kWの発電に相当する節電(省エ
ネ)効果があるといわれています。
照明や換気の基準や規制に対して過剰品質で対応した結果、これだけの無
駄な電気を使っているともいえるわけです。みなさんの周りにも、現実にそ
ぐわなくなった基準や規制、そしてこれらに対する過剰な対応が必ず存在し
ています。
こうしたものの一つひとつを疑って、既成概念を取り払い、見直してみる価
値は大いにあるはずです。
